原価・歩留まり
丸魚と下処理済みの魚はどちらが得?仕入れ価格・歩留まり・人件費・廃棄で比較
魚を仕入れるなら、丸魚と下処理済みの魚、どちらが得なのでしょうか。
仕入れ価格だけを見ると、丸魚の方が安く見えることがあります。しかし、丸魚には下処理が必要で、頭・骨・内臓など、料理によっては使わない部分も出ます。
一方、フィレやポーションなどの加工済み魚は、kg単価が高くても、厨房での仕込み時間や廃棄量を減らせる場合があります。
大切なのは、「仕入れた魚が1kgいくらか」ではなく、「料理に使える状態にするまで、いくらかかるか」という視点です。
この記事では、丸魚と加工済み魚の違いを、仕入れ価格・歩留まり・人件費・廃棄の4つのコストから比較し、店舗に合った選び方を解説します。
丸魚と下処理済みの魚の違いを5項目で比較
| 比較項目 | 丸魚 | 下処理済み・加工済み魚 |
|---|---|---|
| 仕入れ価格 | kg単価が低い場合がある | 加工費が含まれる場合がある |
| 歩留まり | 下処理で重量が減る | 店舗での使用可能割合が高い傾向 |
| 仕込み時間 | 下処理工程が多い | 一部の工程を省略できる |
| 廃棄 | 頭・骨・内臓などが発生 | 店舗での廃棄を減らしやすい |
| 使い方 | アラなども活用できる | 規格を統一しやすい |
どちらにもメリットがあり、店舗の料理や調理体制によって適した仕入れ方は異なります。
1.丸魚はkg単価だけで判断しない
例えば、1kg3,000円の丸魚を仕入れ、料理に使える部分が500gだったとします。
歩留まりは50%で、実際に使える部分の原価は次のようになります。
3,000円 ÷ 0.5kg = 6,000円/kg
仕入れ価格は3,000円/kgでも、使用できる身の重量で計算すると6,000円/kgです。
これは計算を説明するための仮定例であり、魚の標準的な歩留まりを示すものではありません。実際の歩留まりは、魚種・サイズ・加工方法・料理の用途によって変わります。
関連記事 魚の原価を正確に管理するには?kg単価から一皿原価まで解説
2.歩留まりは自店で測って比較する
同じ魚でも、どこまで料理に使うかによって歩留まりは変わります。
例えば、頭や骨を出汁に活用する店舗と、身だけを使う店舗では、丸魚の価値は同じではありません。
仕入れ重量、下処理後の使用可能重量、端材として活用した重量を分けて記録すると、比較しやすくなります。
また、加工済み魚についても、納品重量のすべてが料理に使えるとは限りません。皮引きや切り付けによってロスが出る場合があります。
同じ魚種・用途・使用部分を基準に比較することが重要です。
関連記事 魚の歩留まりを良くするには?飲食店の原価改善につながる5つの方法
3.仕込み時間を人件費に換算する
丸魚の下処理には、ウロコ取り、内臓処理、三枚おろし、骨取り、作業後の清掃などが必要です。
例えば、1尾の処理に15分かかり、1日8尾扱う場合は、次のようになります。
- 15分 × 8尾 = 1日120分(2時間)
- 2時間 × 月25日 = 月50時間
- 月50時間 × 時給換算1,500円 = 月75,000円
これは下処理作業に相当する人件費の試算です。
加工済み魚に変更しても、切り付けや品質確認などの作業は残ります。また、短縮した時間がそのまま実際の人件費削減につながるわけではありません。
それでも、下処理にかかる時間を把握することで、加工済み魚の価格が妥当か判断しやすくなります。
4.店舗で発生する廃棄も確認する
丸魚を店内で処理すると、頭・骨・内臓・ウロコなどが発生します。
これらを出汁や料理に活用できる場合は、丸魚のメリットが大きくなります。
一方、ほとんど廃棄する場合は、食材として使用できない部分の仕入れ費用に加え、廃棄物の保管・処理や清掃の負担も考える必要があります。
加工済み魚は、こうした工程の一部を産地や加工施設で済ませられるため、店舗での廃棄を減らせる場合があります。
ただし、加工済み魚は廃棄物がなくなるのではなく、加工工程で発生する場所が変わるという点にも注意しましょう。
5.加工済み魚は加工工程も含めて購入している
フィレやポーションなどの加工済み魚には、商品によって次の工程が含まれます。
- 頭や内臓の除去
- 三枚おろし
- 骨取り・皮引き
- 規格に合わせた切り付け
- 小分け・包装
加工済み魚の価格には、こうした加工費用が反映される場合があります。そのため、丸魚と比較するときは、仕入れ価格だけでなく、店舗で省ける工程と、その作業に必要な時間まで考えましょう。
結局どちらが得?具体的な数字で比較
ここでは、丸魚と加工済みフィレを同じ魚種・同じ料理用途で比較します。
比較条件(仮定例)
| 項目 | 丸魚 | 加工済みフィレ |
|---|---|---|
| 仕入れ重量 | 1kg | 1kg |
| 仕入れ価格 | 3,000円 | 4,500円 |
| 使用できる重量 | 500g | 900g |
| 歩留まり | 50% | 90% |
| 下処理時間 | 15分 | 3分 |
| 時給換算 | 1,500円 | 1,500円 |
※実際の市場価格や標準歩留まりではありません。計算方法を説明するための仮定例です。
この条件で、使用できる魚1kgあたりのコストを計算します。
| 比較項目 | 丸魚 | 加工済みフィレ |
|---|---|---|
| 仕入れ価格 | 3,000円 | 4,500円 |
| 下処理相当人件費 | 375円 | 75円 |
| 合計 | 3,375円 | 4,575円 |
| 使用できる重量 | 0.5kg | 0.9kg |
| 使用部分1kgあたりのコスト | 6,750円 | 約5,083円 |
※人件費は作業時間に時給換算額を掛けた参考値です。送料・保管費・廃棄処理費は含みません。作業時間の短縮が、そのまま実際の人件費削減になるとは限りません。
この例では、丸魚の仕入れ価格は安くても、使用できる重量と下処理時間を考慮すると、加工済みフィレの方が1kgあたり約1,667円低くなります。
ただし、丸魚のアラを料理に活用できる場合や、下処理にかかる時間が短い場合には、結果が変わります。
つまり、どちらが得かは、仕入れ価格ではなく店舗ごとの実績で判断する必要があります。
丸魚が向いている店舗の4つの特徴
- 魚をおろせる料理人がいる
- 頭・骨・皮なども料理に活用できる
- 魚ごとに細かな仕立てを変えたい
- 下処理する時間とスペースを確保できる
特に、アラまで無駄なく料理に使える店舗では、身の歩留まりだけでは丸魚の価値を判断できません。一尾をどこまで使い切れるかが重要になります。
加工済み魚が向いている店舗の5つの特徴
- 仕込み時間を減らしたい
- 魚をおろせるスタッフが限られている
- 厨房スペースが狭い
- 一皿のサイズや原価をそろえたい
- 店舗で発生する廃棄を減らしたい
特に複数店舗を運営している場合は、フィレやポーションの規格を統一することで、店舗ごとの仕込みや提供量のばらつきを抑えやすくなります。ただし、加工済み魚でも、解凍、品質確認、切り付けなどの作業が必要になる場合があります。
丸魚と加工済み魚を比較するチェックリスト
仕入れ先を検討するときは、次の項目を確認しましょう。
- 同じ魚種・用途で仕入れ価格を比較している
- 丸魚と加工済み魚の使用可能重量を把握している
- 下処理にかかる時間を測定している
- 端材の活用量と廃棄量を把握している
- 送料・保管費・廃棄処理費を確認している
- 料理に必要な加工規格を明確にしている
これらを確認すると、仕入れ価格だけでは見えないコストを比較しやすくなります。
すべてを丸魚か加工済み魚に統一する必要はない
実際には、どちらか一方に統一する必要はありません。例えば、次のような使い分けが考えられます。
| 使用場面 | 仕入れ方法の例 |
|---|---|
| 看板料理・特別メニュー | 丸魚 |
| 定番の焼き物・煮付け | フィレ |
| ランチ・宴会料理 | ポーション |
魚の種類、料理、スタッフ数、提供数に合わせて、使いやすい加工状態を選ぶことが現実的です。また、仕込み作業の一部を外部に任せることも選択肢になります。
関連記事 魚の仕込みを外注するメリット・デメリット|人手不足と原価から考える
よくある質問(FAQ)
Q.丸魚の方が必ず安いですか?
必ずしもそうとは限りません。仕入れ価格が安くても、歩留まりが低かったり、仕込み時間や廃棄が多かったりすると、実際のコストは高くなる場合があります。
Q.加工済み魚は品質が落ちませんか?
加工済みだから品質が低いとは一概に言えません。原料魚の状態、加工方法、温度管理、保管、配送などを含めて確認することが大切です。
Q.どの加工状態から試せばいいですか?
現在、厨房で最も負担になっている作業から考えてみましょう。三枚おろしに時間がかかっているならフィレ、使用量をそろえたいならポーションなど、解決したい課題に合わせて選ぶと分かりやすくなります。
まとめ|「魚の値段」ではなく「使うまでのコスト」で選ぶ
丸魚と加工済み魚のどちらが得かは、店舗によって異なります。
重要なのは、仕入れ価格・歩留まり・仕込み時間・廃棄をまとめて比較することです。
丸魚を使い切れる店舗なら、丸魚のメリットを生かす。仕込み負担を減らしたい店舗なら、加工済み魚を活用する。そして、料理によって両方を使い分ける方法もあります。
「どちらが安いか」だけでなく、「自店ではどちらが使いやすく、総合的なコストを抑えられるか」を基準に選びましょう。
魚の仕入れを、もっとシンプルに。
ファインアトラスでは、産地での仕入れから加工、急速冷凍、冷凍輸送、解凍、仕込み、配送までをつなぐ、新しい仕入れの仕組みづくりを進めています。
丸魚だけでなく、フィレやポーションなど、料理人が使いやすい加工状態で魚を届けることを目指しています。
魚の加工規格や仕込み時間、仕入れコストについてお悩みの方は、ファインアトラスへご相談ください。